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「陽香は、2ピースしかないパズルの1ピース。俺とぴったりはまって、絶対離れない片割れ。だから似てるだけじゃ駄目なの。以上!」
そう言って、仁志はくるりと背を向けた。
その耳が心なしか赤くなっているのを、陽香は見逃さなかった。
「……仁志くん……」
「なあに。この話に続きはないよ」
その背を見つめながら、陽香の中にふつふつと悪戯心が沸き立った。
「あたし、仁志くんのラブレター、持ってるの……」
考える間もなく、陽香の口からそうこぼれた。
仁志がぎょっとして振り返ると、陽香は我に返り両手で頬を押さえる。
「陽香、どういうこと」
「な、何でもない。あたし何も言ってない」
「待って、ちょっと。ご飯どころじゃないよ!」
ガチャン、と皿を置いて仁志はキッチンを出る。それを見越して陽香はキャーと小さく叫びながらリビングまで逃げた。
仁志のラブレター。
それは届くはずのなかった、彼の心の中の言葉。
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