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「羽子ちゃん一階から順番に行ってて」
次の瞬間池上くんがそう言った。
私の頭の中を駆け巡る幾つもの疑問。
とりあえず、この緑と赤のカップを引っ越し蕎麦代わりに配りたい彼の気持ちは何となく理解した。
が……今彼は『一階から』と言った。
つまり引っ越しの挨拶を全世帯にすると言う事?
そして最大の疑問は彼が今私に『行ってて』と言った事。
「え?私一人……で?」
「うん。俺、一件仕事の電話しないといけないから。終わったら追いかけるからさ。ちゃんと好みを聞いて人数分渡してね」
池上くんはそう言うと、私に緑と赤のカップを差し出した。
「電話終わるの待ってるから一緒に行こう」
私が困ったようにそう言うと、池上くんはニッコリと微笑み、
「うんでも、あまり夜遅くなるとご迷惑だから、先に行ってて」
と、優しく諭すようにそう言った。
そんな風に言われちゃうと、
「……うん、分かった」
って言うしかないじゃない。
私は仕方無く、その緑と赤のそば達を受け取った。
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