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玄関を開けた瞬間、ビーフシチューの香りと共に……
「おかえりぃ!」
ワンコのように瞳を輝かせて出迎えてくれる彼氏。
「……ユゥ」
ユウと居ると、素直になれる。
今まで被っていた仮面の欠片も、全てボロボロ剥がれ落ちた。
「っどぁ!?帰って来て早々、泣く!?」
玄関で立ち尽くしたまま、涙を流すアタシを、アタフタしながら顔を覗き込んだ。
「……どーしたんだよ?
何か嫌な事、あったか?」
いつも意地悪な事しか云わないのに、弱るとこんなに優しくなる。
「クリスマス……仕事……(グス)」
嗚咽の合間に云った言葉に、ユウはキョトンとしたまま固まった。
………っと、次の瞬間には
狭い玄関にユウの高笑いが木霊する。
「なぁ~んだ。そんな事!?」
軽く返事して、頭をポンポンと撫でる。
「当ったり前じゃね?
売れっ子麗香様~。
……初めから無理って分かってるよ」
切れ長の瞳は、笑うと目尻が下がる。
二番目に好きな表情。
「ビーフシチュー作ったんだけど、食う?」
「…うん」
「おっし。着替えて来いよ」
彼に撫でられたら場所を無意識に触ると、なんだか胸が暖かくなる。
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