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「長瀬さーん! すみません、ちょっと良いですか?」
スタジオ中央のテーブルで、クライアント様と談笑していた御園さんが手招きしている。
その声は明るくて、だからこそ余計に怖くて痛い。
「……はい、すぐ行きます」
返事を返した長瀬が、私の方を振り返って言った。
「無理すんなよ。辛かったら言え、代わるから」
「……大丈夫、ありがとう……」
声が、弱々しくなってしまったかもしれない。
なんて、そんな反省も随分後でのことだ。
……もらえそうでもらえなかった、その手のぬくもりが、とても恋しい。
なんて、長瀬にだけは絶対言えないことを、思う。
凍り付きそうになった私の心をその目だけで救い上げてくれた長瀬に、深く感謝した。
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