第一章 辺境の村

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午前8時頃― 小鳥のさえずりが聞こえ始め、すっかり明るくなった空に溶け込んだ太陽の光に当てられて、カーテン越しの部屋を眩しく照らしていた。 その部屋の片隅に大きく佇む、古びたベッドの上で寝息を立てていた少年ウォルトは、【例の夢】によって大仰に起こされていた。 (またあの夢か…) そう思いながら、歩くスペースの無い部屋を至って普通に歩きながら、冷蔵庫に手をやった。 ウォルトの家はアパートの一部屋で、大きさは六畳半。日常家具を置くだけで狭苦しくなる部屋が、無数のゴミによって、歩く場所を失わせている。 どうやら彼は整理が苦手らしい。 と言うより、整理という単語自体、頭に記憶されていないと言う方が過言ではないだろう。 どこか湿ったような冷気を漂わせている冷蔵庫から取り出した、少々ぬるめな自然水を飲みながら、夢について考えていた。 ―あの夢は一体何なのだろうか― いつもその事が頭の中に残っていた。 いつもいつも同じ夢。変わらない暗闇。毎回聞こえてくるあの【声】―― おまけに最近では、彼の周りで不可解な現象が多発している。 村人に不幸があったり、魔物が村の中に現れたり、村の家のあちこちが火事にあったり― しかし幸があったりもする。畑が異様に豊作になったり、村の経済が格段と善くなったり、他の街々との交流が深まったり― だがこれだけではただの偶然な事故に過ぎない。しかし、【例の夢】を見た日には、必ず村にこのような異変が起こるのだ。 しかも最近では毎日のように【例の夢】を見るものだから、毎日現象が起こる。従って、【例の夢】を見た日に異変が起こらない日は無い
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