冒頭

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 暗い道を歩く。先の見えない道だ。この道を歩いて何度交差点で、どこの道を選ぶか迷ったものだ。そして、その選んだ道は戻れない。一度歩んでしまうと引き返すことも、変えることも出きない。レールにのった列車みたいな物。  暗い道を歩く。この道は途中途中に壁や段差があったり、たまに予期せぬことも起こる。理不尽な道。まったくをもって忌々しい。  私は暗い道の中光を求めて歩く。何度踏み外し、何度道を間違えたかはわからないが、後戻りは出来ない。自分の信じた道を進むだけである。  これまで何度迷い、下を向き、前を向こうとし、葛藤したことだろうか。自分で選んだものも、たくさんある。だけど、何が起こるかわからない道だ。事故や工事なんて日常茶飯事だ。  まったくをもって理不尽でバカである。  この道は誰もが同じ道ではない。一人一人違う道で分岐点も違う。誰もが歩む道。されど誰もが違う道である。  後戻りは出来ない。だが、今までの道を思いだすことはできる。だからこそ、私の歩んできた道を、人生を、葛藤を包み隠さず、ほぼありのままに記すべきだと思う。  そう、これは、一人の少年の物語。  僕が生まれてから今までの間、父の顔を見たことがない。あるにはあるだろうが、記憶にない。一度写真を見た記憶はある。僕が父に抱かれて、父はグランドピアノのイスに座り、近くにはピアノ、背景にたくさんの人が写ってたことは覚えてる。だが、肝心の父の顔が思い出せない。そこだけすっぽり忘れている。  つまり、僕が物心ついた時には父はいなかった、母と自分とは8歳離れた姉の三人家族。  普通の家族でちょっと片付けや掃除が出来ない程度で、わりと普通な家庭だったと思う。まあ、今となっては普通な家庭かどうかも危うい。正直、この後があまりにも脳裏に焼き付くものなのばかりなので、あまり覚えてない。  いつからだろうか、母はタバコを吸っていた。それは物凄い勢いで。ヘビースモーカーと呼ばれるものだ。  タバコを吸い、僕のランドセルを焦がしたり、ボヤ騒ぎになり、デパートのトイレでもタバコを吸うぐらいヘビースモーカーであった。
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