第一章 再会

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「ワイさんに相談してみたら」 取引先からの電話を担当のスタッフに取り次ぎ、受話器を置きながらケイが言った。 ワイとは、三年前に独立した元同僚であり、企業経営や個人のライフプランに関する相談業務を中心にコンサルタントとしてそこそこ活躍している男性である。 「そうね。」 ミイは明るく答え、一緒に働いていたときのワイの姿を思い浮かべた。 誠実な仕事ぶりに定評があったワイさんのことだ、話だけでも聞いてもらえれば、少しは心が軽くなるかも。 そんな思いで、早速、ワイに電話し、終業後、近くの喫茶店で会う約束をした。 ミイはワイに会うなり、抱えている悩みを一気に話し出した。 ワイは静かに、ミイの話にずっと耳を傾けていた。 話が一息ついたところで、おもむろにワイが話しかけた。 「それで、ミイさんはどうしたいのですか」 冷めかけたコーヒーを飲むミイの手が止まった。 「どうしたいって言われても・・・」 「すみません。わかりにくいですね。質問を変えます。ミイさん自身が、この先どうなればいいとお考えですか」 「どうって・・・・」 話を聞いてもらい、お互いの近況を交換しあうだけで良かったのに、何か雲行きが怪しい。 「難しく考えなくても、思いつきでいいので」 「先のことを考えるとただ漠然と不安になるだけで・・・」 ミイは、予想もしていなかった質問に少しイライラした。 「もし、ミイさんがご両親のために責任を持って身の回りのことをきちんとやってあげたいと思うのなら、成年後見制度についてお話をしますが」 「成年後見制度・・・」 「ええ、認知症などによって判断能力が十分でないかたが不利益を被らないように家庭裁判所に申し立てをして援助をしてくれる人をつけてもらう制度です。」 「その制度を利用すると何ができるの」 「財産管理と身上監護です」 「財産管理って。財産の運用もやるの」 「そうではなくて、ご本人、ミイさんの場合ですと義(ごりょ)父母(うしん)の代理として契約の締結や費用の支払をすることが中心で、財産管理でいえば、預金や不動産・有価証券の維持管理が目的で投資は含まれません。」 「身上監護というのは」 「ライフスタイルを見直して介護サービスが必要だろうかだとか、老人施設に入所する際にどういう施設がいいだろうかとか、病院の入院や通院をする場合の医療など、について身上面での法律行為を行うのが目的です」
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