~小鳥が囀り、二人が出会う~

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池袋にお昼の13時くらいについた。 平日のこんな時間に会うことのできる人って、 どんな仕事をしてるのだろう。 無職? 自由業? 学生? 仕事のことは聞かなかった。 その方が楽だから。 仕事のことを聞けば、私も聞かれるだろう。 その時、私は何て答えればいいだろう。 そんなことを考えながら、池袋に向かう。 会うのは、 少しの時間だけにしようと考えていた。 あまり長い時間会いたくない。 一回だけでいい。 少しの時間だけで。 信秀に私のことどんな人だと思うって聞こう。 そして、そのイメージに私はなろう。 一回だけでいい。 何の後腐れもない。 一回だけなら、何の先入観も持っていない、 私のイメージを信秀は伝えてくれる。 私は、自分をおもいっきり演出できる。 相手に合わせて、着飾った、脚色された私を。 でも二回目はない。 二回目に会ったらボロが出そうだから。 私は少しのボロでも出したくなかった。 ボロを出してしまうと、そのほころびから、 メッキが剥がれてしまう。 そして、何よりも嫌なのはー 今度は、 貴方の理想のイメージに私がなってしまうからだー それだと今までの私と同じ… 信秀と会った。 仕事はライターをしてると言った。 自分とは全く違う人種。 普段会うことのない人種。 面白いなって思う。 話していくうちに、少しずつ、信秀に興味を持っていった。 話は面白くない、だけど、熱心に私の話に耳を傾けてくれる。 そして、自分の話を伝えようとしている。 その気持ちが伝わってくる。 良い人なんだろうなって思う。 だけど、この人はきっと、すごく不器用なんだろうな。 その予想は最後まで変わることはなかった。 一回だけの出会いのつもりだった。 その方が楽だから。 ライターならお話を作るの上手いんでしょ? じゃあ作って? 貴方のイメージする フィクションの私、二次元の私を。 私に教えて? その私に私はなっていきたい。
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