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あれから月日が経ち、平々凡々な日々が続いている。
なんて事のない日々は欠伸が出るほどに退屈で最高に気分が良い。
「あんのアホが! どこやぁああああ!!!」
「お仕置きが必要みたいですねー?」
腫れ物にでも扱われる事になったのだが僕としては三日も経てば決着していた。
確かに悲しい、でも仕事は馬鹿みたいに溜まり、書類のタワーが崩壊寸前までうず高く積み上げられる。
新しく土地を治めるウルなどは乙女にあるまじき悲鳴を上げながら格闘しているだろう。
「こっち見なさいよ」
長い爪が肩に突き刺さり、皮膚を裂く。不機嫌そうなユーリアが桜色の髪を広げながら文句を言っている。
そんな彼女にお詫びにキスをすれば唇を舐め上げられ舌を捻じ込まれた。
「悪い男、どれくらい女をとっかえひっかえしたのかしら?」
嫉妬の篭る憎悪にも似た視線、爪はきっちり背中に突き立たてられ顔を顰める。
魔法道具から聞こえる罵詈雑言を流しながら僕とユーリアは二人きり、挨拶もそこそこにベッドに転がれば只管爪を立てられるのだ。
「いつもの事だろう? こんなチャンス、逃すわけが無い」
男にだって女を落とす術はある。バイトなんてしたことが無い僕とカンナの生活が成り立っていたのは僕が女性達のヒモとして金品から何から貢いで貰っていたからだ。
口説くチャンスと見れば傷ついているフリくらい一ヶ月くらいは継続させるよ。
「流石に同じ手を繰り返し過ぎてバレちゃったよ」
僕と彼女の間で潰れる胸の感触に浸りながら瞳を合わせれば可笑しそうに笑うユーリア。
「何人食べたのかしら?」
「ふふっいくら貞操観念が強い女性でもちょっとくらいなら、と思えるくらいに悲しい姿を演じたら優しい彼女達は一緒に寝てくれたよ。もっとも、僕の寝ると彼女達の寝るには違いがあったようだけど」
子犬のような表情なんてガキの頃に散々していたのだ。ギュッと抱きしめて弱弱しい言葉と一緒に上目遣いで一発さ。
引くように押し、押すように引き、一度引っ掛かればこっちのものだ。
今だけは、なんて言葉は魔法に近い。忘れさせて、もなかなか。
けど一番はごめん、という相手に罪悪感を植え付ける方法だ。
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