神罰の声は高らかに

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 また何か失敗した自分が悪いのだとパトリシアは自らの金色に輝く髪に触れながら感じてしまう。両手を伸ばし、ノエルへと向ければいつものようにノエルはパトリシアのパジャマに手をかけ―― 「スヴェン」  この部屋で唯一の男である恋人に向かって低く、それでいながら威圧感のある声を出せば慌ててパトリシアを視界から外して緊張で固まるスヴェン。本来ならば部屋を出て行けと言うはずなのだがパトリシアはそうさせない。 「別に、見られても困らない」 「ダメですよパトリシア、女の子は好きな男性以外に肌を見せてはいけないのです」 「スヴェン。ルーペルトなら、良いよ」 「ダメですっ!!」  自らの貧相な肉体に女を感じさせる部分など皆無、肋骨が浮き上がり腰骨までくっきりとして肉付きは悪い。性的興奮を覚えるものでも無いと判断しており、更にパトリシアはスヴェンを父のようだと思っている。  そこに嫌悪という感情は一切入っておらず、肉親に裸を見られても問題無いと判断しているがノエルは否と返す。  大きな声で否定しながらローズピンクのショートヘアーが悩ましげに揺れ、白を基調とした軍服に皺が寄る。  パトリシアがそんなノエルの耳を見れば少し拗ねた時の癖なのか耳が赤く染まり、心なしか頬が膨らんで見えた。 「嫉妬深い女、大変」 「パトリシアっ!」  俗物と判断された流行の本にあった嫉妬という感情、それに似ているとパトリシアは思うのだ。ノエルが今度こそ顔を真っ赤にしながら今日はいつものワンピースとは違い、神子の法衣を着せてくれる。  横目で何度もスヴェンの方へと視線を向ける度にスヴェンは肩を跳ね上げ、何度も首の後ろを摩っていた。
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