神罰の声は高らかに

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 これは確かな異常事態、この三人だからこそ理解の及ぶ場所にある危険信号。  今まで無かった不確かな事象に対して、未来を危ぶんでいるということ。それはパトリシアの夢見の外にある肌を刺す異常。 「夢が、夢がね、ずっと同じだと思ってた夢が、少しずつ変わってきてる。そして、いつもなら結末まで見れるのに途切れるの。はっきり見れた自堕落勇者の最後がだんだん見れなくなっていくの。これはどうして?」  それは不可思議な現象であり信じられないことも含まれた。パトリシアも疑問に持つ、一度たりとも外れたことがない自らの夢見が少しずつズレていく、これは今までに無かった。それだけに困惑し頭の中が未だに整理できてしない、そこにあるのは確かなのに自らの指の隙間から零れ落ちていく。  どんなことをしても外れなかったはずなのに、ハズレようとしている。それは未知と同時に恐怖と歓喜を含む。  外れてほしい、だけど外れないでもいてほしい。利用価値があるこそ生かされていると言っても過言ではないパトリシアの為には外れてほしくなく、外れればただの少女として生きられるかもしれないという淡い願望。  スヴェンとノエルの脳裏には複雑な感情と言葉が渦巻き、これまで見れなかったパトリシアの複雑そうな内心に対して安心させる言葉を捜すが、それに対する答えを持ち合わせてはいなかった。  二人にしてもこれは初めての困惑、足元から崩れ落ちるような恐怖を確かに予感してしまったのだから。 「……そう、解らないのね。うん、解ってる。それが普通なんでしょう? これが普通、夢なんて碌なものじゃないと思っていたのだけどいざ最後まで見れないとなるとこんなに怖いなんて知らなかった。それ以上に二人に何かあったら困るの、だって自堕落勇者が死ぬ現場、そこにスヴェンがいるんだもの」   瞳を閉じて淡々と吐き出す感情と複雑な気持ち。自らを落ち着かせるように手を重ねるパトリシアはスヴェンをただただ思い、再び目を開けると視線を重ねる。  見つめられたスヴェンは険しい顔をして見つめ返すのだ。 「神子さ……じゃないパトリシア、俺が死ぬかもしれないって? 冗談はよしてくれよ。この俺が? それは無いから安心しろって」  それを吹き飛ばすように明るく笑い、パトリシアの頭を撫でるスヴェン。パトリシアはなすがままにされるがスヴェンの軍服を掴む。
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