神罰の声は高らかに

10/24
前へ
/262ページ
次へ
「君は心が清らかだ、だからこそ人々は癒される。そのミルクのように真っ白、汚れが無い人間的に素晴らしい。反対に君が慕う勇者は失礼を承知で言わせてもらうが珈琲のように真っ黒だ、それが良い悪いはともかく庶民の私から見れば彼は黒いからこそ君に癒されている気がする。だからこそ君を慕い、君を気にかけているのだろう」  「それはあると思います、だらしないし血だらけで来た事もあったし突然居なくなるし連絡も全然――」 「――尻尾」 「はっ!」  愚痴を零すオルカを優しく慰めるように笑むマスター、尻尾と言えばオルカはいつの間にか左右へと激しく揺れる自らの尻尾を後ろ手で押さえ込み、苦笑い。 「君達は白と黒、ミルクと珈琲を混ぜたら灰色のカフェラテの出来上がりだ。私は酒場で働いているが一番好きなのはカフェラテなんだ」 「納得がいきません」 「君はそうなんだろう、だが私は黒と白が交じり合うように戯れる君達の姿を見ると心が穏やかになる。君と彼が仲睦まじく会話している時は冗談抜きにして平和の象徴とすら思えるよ。男女の仲というのは正反対の相手を求めるという、自分が白なら相手は黒。交われば灰色、なんでもかんでも決め付けるものでもないさ」 「私なら白に染めます、むしろ勝つというか、白く塗りつぶすような!」  やはり不貞腐れるオルカにマスターは声を出して笑う。不満そうに見つめるオルカにマスターは小さく謝りながら目じりに浮かぶ涙を拭う。 「ふふっそうだね、君の場合はそうだろうとも。我が強い君は全てを塗り変えてしまうのだろう、例え相手が勇者であってもね。女性が強いパートナーの場合はミルクのままかもしれない」 「何がそんなに可笑しいんですか!? こっちは大真面目にっ!」 「いやいや、こっちの話さ。つまらない大人の、ね。君は思うように行動するのが君らしく、そして正しい道なのかもしれない。だからこそ白なのだろう」
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6766人が本棚に入れています
本棚に追加