神罰の声は高らかに

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 真っ白に染まった器、半透明な容器が白く染まりミルク一色。それは恋で例えるのなら染まった証なのだろう。 「先程君が言ったんだよ、白か黒どちらかじゃなければいけないって。君の気持ちが恋なのか恋じゃないのか、それともこれが恋と仮定して染めるのか染められるのか。こんな風に考える事自体が恋、なのかもしれない」 「マスターがカフェオレ好きな気持ちがよーくわかりました」 「私が好きなのはラテの方だよ。それにからかっている訳じゃないんだ、君が結局の所気にしているのは彼の気持ちなのだろう? 何が原因か与り知らないが彼からの気持ちが本物か知りたいんだ。だからそんなお酒を一緒にキープする」  知って欲しい、けど知らないでいてほしい。そんな女心にマスターは敏感、返す言葉もないオルカは小さく頷く。  陶器に入ったお酒が重要ではなく、込められた意味が重要なのだ。当の本人が知っているはずもなく、このお酒を飲む時が覚悟を決める瞬間なのだと思っていたがその機会が全く訪れないのはとあることに臆病になっているからだとオルカも理解している。 「決めました、今度あの人が来たらこのお酒開けます。私の気持ちぶつけます! 白黒ハッキリくっきりつけます!!」 「良かったら愚痴でも吐くといい、最近働き詰めだったろう? お酒がダメならミルクを出させてもらう」 「マスター、内緒ですよ? ちょっと信じられないかもしれないんですけど――」  小さく明かりが照らす中でオルカはぽつぽつと語り始める。マスターは何度も相槌を打ちながら話に聞き入り、カオルの話になれば喜怒哀楽を示すオルカに嘘偽り無い恋の気持ちを悟り、悩める女性の言葉に耳を傾けていく。  その秘密は夜の音に掻き消され、二人以外に共有する者は居ない。マスターははじめて見るオルカの儚い笑顔に声が詰まるが、それは確かにオルカの恋だと言い切ることになる。
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