神罰の声は高らかに

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「あぁ、オルカね。貴女はしっかりと嗅ぎ取れるのね、獣人だからとかそういう問題じゃないのかしら? つい先日まで一緒に勇者と一緒に居たわ、そこで強烈な違和感と不可思議な現象に遭遇した。本人から口止めされたけどこうして行動してるのよ、あの馬鹿を連れて帰る人を探しているの。どんな犠牲を払ってもね」 「ちょっ待てや! オルカはダメや!! 一般人を巻き込むのは無しやろ!!」 「私は気にしない。むしろただの一般人の方が都合が良い」  オルカの鼻がまた血の匂いを嗅ぐ。本能が告げている、ダメだと。関わってはいけない、と。ティアナとユーリスが言い合っているのを何処か遠くから見つめているように感じられ、小さく震えているのに気付く。  誰かの死、というのを嗅ぎ取った今、オルカは震えた。カオルが居なくなるという想像、それだけで怖くて仕方ない。 「私、行くね」  自然と震える声だが、しっかりと意思を秘めた声が通った。争いをしていた二人が自然とオルカへと向けられ、ティアナが大声で止め、ユーリスが黒い笑みを浮かべる。  すぐさま偽装された証明書に商人という肩書きが入った移民カードがオルカに手渡され、ついでにとばかりに麻袋ごと手渡されるのだ。 「オルカ! それを寄越し! お前自分が何をしてんのか理解して――」 「ごめんなさい! どうしても確かめたくて!!」  烈火のごとく怒るティアナの言葉を遮り、オルカは胸に抱いたお酒をティアナの上へと放り投げれば脱兎の如く駈けて行く。  ティアナが放り投げられたお酒を無事に受け取った頃には既にオルカは遥か遠くにおり、人の姿から獣へと変化していくところだった。  灰色の髪が体毛へと変わり四肢が変化、祖先が狼の彼女はしなやかに家々の上へと軽々と飛び月明かりに照らされる。
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