神罰の声は高らかに

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 麻袋を鋭く伸びた牙で咥え込み、強靭な肉体のみで城門を軽々と越えていった。 「へぇー本当に狼の獣人だったんだ。あの速度なら二日、いや、一日で――」 「こん馬鹿が!!!!」 「あはははは! 肝が据わってる娘だったわ!」  ティアナの怒号は虚しく響き、用は無いと判断したユーリスも既に物陰に姿を消しており高笑いする声だけが響く。 「私は私のやり方で行かせてもらうわ、頭の硬い軍人様!」  ユーリスもまた別口へと急ぐ。幾つか対抗手段を切り、既に向かわせた奴らも存在するが成功するとは限らない。個人的に雇った奴、頼み込んだ奴、様々な手口込みこみで止める手口を講じる。  狡猾に、丁寧に、ゆっくりと確実に目的を遂行する為のピースを揃えていく。そこに選ぶ手段など無く、できることは全部やる。  彼女にとって、大切なことはカオルの無事。その一点のみであり、それ以外はどうでもいい事柄だった。 「――手ぇ貸すことはできんがウチにできることがあったら連絡せぇよ!!!!」  やけくそ気味に、遣る瀬無い言葉。ティアナの宣言は確かにユーリスに届き、城門の外を駆け出していたオルカにも届いていた。  溜息を吐き、ティアナは腕に抱えたオルカとカオルの札がかかったお酒を暫く眺め、神の国の国境までの詰所にオルカの特徴を伝え無視するように指示を出す。  反論してくる頭の硬い軍人達には極秘任務だと告げれば良い返事をしてくれた。 「……はぁ、ウチも悪に染まってもうたわ」  通信を切り、ティアナは頭を掻く。暫く黙り、頭の中がごちゃごちゃとしていることに気を揉み、大きく溜息。  こんな時に真っ先に動けない立場に苛立ちを覚え、歯軋りをすれば口の端から血が一筋流れ落ちた。
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