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◇◇◇
どうにも好きになれない雰囲気だった。真っ白の家々に真っ白の絨毯、真っ白の法衣に白い絵画。
国家の色も白、鎧も白、人という存在そのものも白、全てが白く染まった世界に迷い込んだような白が当然の国。
国境付近で出迎えられ皺だらけの元老院の一人だと述べた男と馬車に乗り込み腹の探りあい、ある程度の情報交換を済ませる頃にはお城、というよりも巨大な聖堂が聳え立つ場所へと到達した。
馬車を降り見上げる先には十字架が掲げられるように中心に位置しており、周囲にはそれを崇めるように装飾が施され厳格な雰囲気を感じさせた。
汚れの無い真っ白の絨毯は神々しく輝くようで眩しく、同時に踏み込んだら黒く染まってしまうような怖さがある。
カオルの方を向く元老院の翁が試しているような視線を向けていることに気付かないフリをしながらカオルは一歩踏み込んだ。
途端に襲うのは吐き気、体中を弄られている様な不快感、体の隅々だけでなく魔力の一つ一つまで探られている気持ち悪さ。
鳥肌が立ち生理的な気持ち悪さに思わず顔を顰めようとするが平然を装い、もう一歩踏み込むと波が引いていくように気持ち悪さが頭の先からつま先から外へと逃げるように消えていった。
「白、ですな」
零された言葉にカオルは試されたのだと理解すると同時に、気持ち悪さの残る得体の知れない術に恐怖を覚える。
翁が思わず零した言葉もまた訝しげであり、心底不思議そうな、思わず出てしまったかのような声色が耳に残った。まるで黒だと言いたげであり、この結果に不満があるように思えたのだから。
翁へと視線を向けるカオルだがまともに取り合ってくれる様子は無さそうで鎧を着込む兵士が重々しい巨大な扉を開くとその中へとゆったりと歩いていく。
カオルも続くと背後から護衛のように兵士が何十人と列を成し、厳格な空気と腰に提げた剣の鞘が無骨な音を立てる。
同じような廊下は迷路のようであり、幾つも扉を潜りようやく本命であろう扉に辿り着いた頃にはカオルの方向は狂わされ、自身が何処に存在しているのかえも解らない。
先導していた翁がゆっくりとカオルへと向き直り、兵士達がその巨大すぎる真っ白の扉を何十人がかりで開いていく。
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