神罰の声は高らかに

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「ようこそ我らの国、神の国へ。ここから先は神の御前、くれぐれも失礼の無いように心して望むが良い。お主を神々と天使様は見ておられる、そなたに主神のご加護があらんことを」   指先で教え通りに印をカオルに授ければ会釈をしてその真っ白の絨毯から身を引き、その先をカオルに譲る翁。  頭は下げたまま黙ってしまえばカオルはお礼を言い、道を示された先へと歩き出す。  眼前に広がる景色は異質だった。白い法衣を着込んだ男女がただ一人カオルだけに視線を向け、誰一人として微動だにしない。  天井は高く見上げた先には神々と天使が彫られた彫像が堂々と存在しており、二階三階へと続く階段に階下を見下ろすように設置されたテラスに人々が詰めている。  白い絨毯の先にあったのは周囲がぽっかりと空いた一段だけある小さな舞台。そこに立ち、首を上げて見上げた先にようやく法王、神の国の権力者と元老院という法王を支える重鎮達と対面することができた。  対面、という文字に疑問を抱く。確実に見下ろされ、自身らが格上なのだという配置と自覚が溢れているように感じられこの差が埋められない溝に近しいのだとカオルは薄っすらと感じ取る。  後光が差すような眩しさに目を細めながら見上げた先にまた異質が目に飛び込む。白い法衣が並ぶ中に浮かび上がるような不自然さと隔絶された世界にただ一人存在しているような特別感。  黄金の法衣を身に付けた少女を見つけた。黄金色の髪は綺麗に梳かされているのか跳ねている部分は無く、輝く黄金はまさに少女の存在そのものを示しているよう。  視線が合ったと感じた瞬間に少女の背後が眩い光に包まれた気がすると身の丈を軽々と超える真っ白な翼が黄金の少女を抱くように包み込むと光の中に消えていくのを幻視する。  不思議そうに首を傾げる少女の前髪が垂れ下がると同時に背後に控えていた二人から鋭い視線。  一人は真っ黒な髪と精悍な男らしい肉体をした男と神経質そうな容赦が無さそうな女、カオルの視線が誰に向けられているのかを知っているようでほとんど睨むようにカオルへと視線をぶつける。  カオルに言わせればこの二人もまた異質、他の者は感情という感情を感じさせず人間らしさの臭いがしないがこの二人は別物。ただ少女だけを思っている人間らしさを感じさせた。
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