神罰の声は高らかに

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 その異質さも際立っている。先ず少女は魔力を感じないのだ、一切魔力が無いのにも関わらず特別な力を感じるというのは何かを宿している証拠。神に愛されているというのは先ほどの幻視から薄々と感じる。  イシリアと同じ奇跡を宿す者、資料にもあった神子と呼ばれる人種なのと当たりをつけると同時に、まだ未熟な部分があるのを察した。  次いで男、何故かこの男には親近感を感じる。匂いというか嫌いにはなれそうにない雰囲気、だが同時に面倒そうな男でもあった。  その異質さは左手の一点、怨念執念恨み辛み嫉みという負の感情が全て詰まっているのをカオルの悪魔を司る部分が危険信号を鳴らしている。  一口に負の感情と言っても一人二人という規模ではない、この国全体の負の感情が今この瞬間にも男の左手に集まっているのだ。これを異質と言わずになんと言うのかカオルには検討もつかない。  驚くべきなのはそれを平常心のまま心が壊れず保っていることだ。普通の人間ならとっくに心が死んでいるはずなのにカオルの見立てではまだ幾分かの余裕があるように見えた。  しかも驚くべきなのはカオルの死者の怨念よりも生者の方がより濃い負の感情をその身に受け続けていること、能力の使用不使用に限らず休まる時もなく、その身に受けているという耐久力。  その隣に立つ女も普通じゃない。右手は手袋に隠れているが煌く光が漏れでるような聖の波動はこの場だけでなく、隣の男を常に癒すようにその異質さを感じさせた。  自然と邪悪なものを浄化する右手はまさに神が宿っているような清らかさ、心の奥底を見透かされ少しでも浅ましさや悪に染まったものがあれば片っ端から許され改心させられる有無を言わさない強引さは人という人種より上位の存在たる驕りそのもの。  だがその驕りもまた強者の証、そこに在るのは神々が認めた清く正しく高潔な魂と人を統べる器である証左。  正には神々の許しと施し、癒しと加護を与え信仰心を得るような強さ。逆に悪や負には罪には罰を、神々が正しいのだと譲らない信仰心でもって敵と認識したものを駆逐していく正義がある。  それでもって悪を許さず浄化する一方的な献身。その献身こそが男を救い癒す術であると同時に男を生かしている。  目立たないのかもしれないがこの女こそが厄介なのだとカオルは肌で感じた。
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