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赤い、紅い館があった。
夜の闇に包まれた世界の中で異様な雰囲気を醸し出すその館の、主の間。
そこには二つの人影があった。
一つは、紅いドレスを身にまとった少女。背中から生えた蝙蝠のような翼と、口元から顔を覗かせる鋭い牙が彼女の異形さを物語っている。
もう一つは、紫のドレスを身にまとった妙齢の女性。とくに異質な点はなかったが、三日月形につり上がった口角がどこか胡散臭い印象を与える。
二人は内緒話でもするように身を寄せあって話していた。
「本当に、あの二人を会わせるの?」
「ええ。彼と約束したもの。今私の式神を送ったわ。…………ところで彼女は?」
女性は誰かを探すように辺りを見回す。
「ん? もうすぐ来るわよ。だって、そういう運命なんですもの」
――――パチン。
少女が指を弾く。すると全く同じタイミングで扉がノックされた。
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