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翌朝目覚めると、和也さんの姿はすでにベッドにはなかった。
それもそのはず、時刻はお昼前だった。
コーヒーのいい薫りが辺りに漂う。
まさに、初めてここに泊まった日と同じだった。
あの日のデジャヴかと思うくらい。
20畳はあるかと思われる広い寝室、中央にキングサイズのベッドがおかれ、少しのグリーンと整頓された棚があるのみ。
贅沢な寝室。
あの日と違うのは、あたしの気持ちとふたりの関係……
あたしは、ギュッと目を閉じて幸せを噛みしめた。
重い体を引きずりながら扉を開けると、部屋中に広がったコーヒーの薫りに包まれた。
「おはよう璃子」
その声の主は、そう言うとあたしに歩みより、そっとあたしを抱きしめた。
「おはようございます」
ふんわりとコロンの香りが鼻をくすぐる。
寝るときに包まれる、安心できる薫り。
見上げると、微笑んだ和也さんがいた。
「大丈夫か?今日は、ゆっくり過ごそうか」
「ありがとうございます」
あたしは、和也さんの優しさに甘えた。
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