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連休最後の夜。あたしは立っていた和也さんの背中に、初めて自分から抱きついた。
「璃子、どうした?」
不思議そうに優しい声で和也さんが囁いた。
「しばらく、ちょっとでいいの。少しこのままでいて」
和也さんは、あたしが回した手をそっとさすった。
「どうした?言ってごらん」
和也さんの優しさが心に染み渡る。
あたしの手を解くと、和也さんは、あたしを正面から抱きしめた。
「思っていることを、言葉にしてごらん……その約束だよ」
和也さんは、あたしの頭を撫でながら囁く。
「わかんないけど、心が……苦しい」
あたしは、表現しづらい心を伝えた。
「そうか、苦しいか」
ひと言弱音を口にした瞬間から
ダメだ!あたしったらなんて子どもなの!?
こんなに甘えてちゃダメよ!
と、もうひとりのあたしがダメ出しする。
「なっ、何でもないの!」
あたしは、我に返ると和也さんから離れようとした。
でも、和也さんは、抱きしめた手を緩めてくれない。
「はっ、離して!」
必死に告げるあたしに
「駄目だよ。まだ気持ちを吐き出せてないだろ?
自分の気持ちに蓋をせず、きちんと言わなくちゃ」
和也さんは、あたしを上から優しく見つめた。
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