◇◇ 第15章 ふたりの生活 ◇◇

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「きちんと、少しずつ言葉にしてごらん」 和也さんの優しい問いかけに、あたしの心の声が引き出される。 「なんだか……怖いの」 「怖い?」 「なんだか……なんだか……」 「ゆっくりでいいから、思っていることを言ってごらん」 和也さんは、子どもをあやすように、あたしの背中を擦ってくれる。 「和也さんと……」 「俺と?」 「明日から会社に行ったら……和也さんと、また距離が出来そうで……怖いの」 「距離!?こんなに傍にいるのに?」 「……」 確かに。でも、この得体のしれない気持ちは……一体なんなの? 自分の気持ちなのに、わからなくなる。 「そうか、まだ本当の気持ちがあるだろ?言ってごらん」 「……」 「まだ、本音があるよ?それを言ってごらん」 あたしの本音が、和也さんの優しさによって、みっともないぐらい引き出される。
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