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コーヒーをひとくち飲んで、ホッとひと息ついた。
「ねぇ、桜井。松本部長ったら、あんたのこと『璃子』って呼んでたね」
ニヤリと嬉しそうに笑う村上姉さん。
「えっ!?そうでしたか?」
全く気づかなくて、言われた今、あたしは恥ずかしさに襲われた。
会社で、あたしを呼び捨てに、する?
「だよっ!今日、朝から何度も、桜井を呼ぶ度に、『璃子』って言ってた」
「……」
「松本部長ったらヤルよねぇ~忙しくて、誰も気づかないし、9連休の後だから、周りもそんな風に呼んでたかも?なんて思っちゃうもん」
「そうですか?」
「だって、呼ばれてる桜井が気づかないくらいなんだから、松本部長の作戦大成功でしょ!
松本部長の為に、あたしも桜井のこと『璃子』って呼ぶことにするわっ」
やけに嬉しそうな村上姉さんがあたしを見つめていた。
「っで、引っ越ししたの?」
村上姉さんは、限られた時間の中で、確実に重箱の隅をつつくような質問をしてくる。
これがサッカーなら間違いなくエースストライカーだ。
「……はい」
遠慮がちに答えるあたしに
「じゃあ、その話しは次回!」
と、言ってニヤリと笑うと
「さぁ~もうひとがんばり!」といいながら、あたしの肩を叩き、フロアに戻って行った。
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