◇◇ 第16章 四角関係 ◇◇

23/37
前へ
/38ページ
次へ
夜。 早めに飲み会から帰宅した和也さんは、「ただいま」と、言いながらいつも通りあたしを抱きしめた。 「お帰りなさい」 本当は、いろいろ聞きたいことがあるけれど、黙っていたあたしに、先に口を開いたのは和也さんだった。 「俺に聞きたい事、あるよね?」 「無いです」 「いや、ある」 「無いです」 「じゃあ俺から。りんごは、優輝だよね?」 お見事!大正解です!とは言わないけれど、さすが鋭い和也さん。 あたしも負けずに話し始めた。 「冴子さん、綺麗な方ですね」 「璃子、昨日の今日で、優輝に運命感じちゃった?」 「和也さんだって、久しぶりの冴子さんに、運命感じちゃったんじゃないですか?」 「璃子ちゃんなんて言われてたし」 お互いに噛み合わない質問だらけの一方的な会話に、あたしは、つい苛立ちを覚えた。 「和也さんだって名前を呼び捨てで呼ばれてたじゃん!元カノなんでしょ!」 ……しまった! つい言い放った言葉に、和也さんがニヤリと笑う。 「そう言う事か」 ヤられた!言わないつもりのちっちゃな嫉妬の感情を、見事に引き出されてしまった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2255人が本棚に入れています
本棚に追加