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夜。
早めに飲み会から帰宅した和也さんは、「ただいま」と、言いながらいつも通りあたしを抱きしめた。
「お帰りなさい」
本当は、いろいろ聞きたいことがあるけれど、黙っていたあたしに、先に口を開いたのは和也さんだった。
「俺に聞きたい事、あるよね?」
「無いです」
「いや、ある」
「無いです」
「じゃあ俺から。りんごは、優輝だよね?」
お見事!大正解です!とは言わないけれど、さすが鋭い和也さん。
あたしも負けずに話し始めた。
「冴子さん、綺麗な方ですね」
「璃子、昨日の今日で、優輝に運命感じちゃった?」
「和也さんだって、久しぶりの冴子さんに、運命感じちゃったんじゃないですか?」
「璃子ちゃんなんて言われてたし」
お互いに噛み合わない質問だらけの一方的な会話に、あたしは、つい苛立ちを覚えた。
「和也さんだって名前を呼び捨てで呼ばれてたじゃん!元カノなんでしょ!」
……しまった!
つい言い放った言葉に、和也さんがニヤリと笑う。
「そう言う事か」
ヤられた!言わないつもりのちっちゃな嫉妬の感情を、見事に引き出されてしまった。
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