2176人が本棚に入れています
本棚に追加
「璃子、一緒に帰ろうって言っておきながら、悲しい思いをさせてしまってごめん」
「えっ」
思わず顔を上げると、和也さんの曇りの無いまっすぐな瞳と視線が絡まる。
「冴子は、何か勘違いをしていたようで、今、きちんと誤解を解いてきたよ。俺と璃子が結婚を前提につき合っている事、一緒に暮らしていること……全部話してきた。本当なら、もっと早くに話しておかなくてはいけなかったのに、なかなか話せる機会が無くて、遅くなってしまった。璃子に嫌な思いをさせてしまって、本当にごめん」
……なっ!?
素直にすべてをさらけ出す和也さんに、ますます、あたしの分が悪くなった。
和也さんの右手が、あたしの左頬にそっと触れる。
穏やかな表情と見透かすような視線に、目が逸らせない。
あたしが悪いわけではないと思いたいけど、きっと優輝さんがキスをしたことには、あたしにも責任がある。
でも……でも!
あたしは、いたたまれなくなると同時に、重すぎる罪悪感から解放されたくて、素直に心の言葉を吐き出した。
「……ごめんなさい」
「何が?」
何がって……見てたんでしょ!?
和也さんの態度に心が動揺する。
わざと言わせたいのだろうか?
それとも本当に見てなかったのか?
あたしは、自白を強要される追い詰められた犯人のような気持ちになった。
最初のコメントを投稿しよう!