◇◇ 第17章 交錯する想い ◇◇

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    ずいぶん長い間抱きあっていた。 そっと唇が離れた時には、あたしは息が上がり、ぼんやりと和也さんを見つめていた。 「大丈夫か?」 穏やかな声が降り注がれる。 あたしは、コクンと頷いた。 和也さんは、愛しむようにあたしの頭を自分の胸に押しつけた。 「今日は、いろんな事がありすぎたな」 あたしを労うように、そっと呟いた。 「……うん」 本当に、いろんな事がありすぎた。 「璃子、どんな事があっても、必ず俺の元へ戻って来い!俺は、ここで璃子を待ってるから、安心して帰って来い」 ゆっくり、優しく囁かれる言葉は、深くあたしの心に届く。 「……はい」 あたしさえ見失わなければ、必ずある灯台のような存在をうれしく、頼もしく感じた。 今日だけで、何度もあったすべての緊張から一気に解放されたあたしは、その場で、和也さんを掴んだまま意識を失うように倒れ込んだ。 「璃子……」 大好きな和也さんの声が聞こえる。 お願い…… ずっとあたしのそばにいて……             
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