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あたしは、優輝さんとちゃんと向かい合えず、罪悪感に駆られていた。
ケーキのお礼も言いたいし。でも、身体は正直で、優輝さんの姿を見るだけで、アタフタしてしまっていた。
和也さんと優輝さんはと言うと、
和也さんが『俺たちの仲は、変わらないよ』と、言っていた通り、相変わらず仲良しで、普段と変わらず休憩で会うと、2人でコーヒーを飲みながら話をしていた。
やっぱり、大人だよね。
ちょっと羨ましく感じながらも、遠くから2人の姿を見ているだけで、あたしは、安心感を覚えた。
あたしと優輝さんは、何度もニアミスを繰り返しながら、数日が過ぎていた。
そして、金曜日。
逃げも隠れも出来ない状況は、突然訪れた。
あたしが、社食で食べ始めた辺りで、優しい声が降ってきた。
「璃子、隣いいかな?嫌なら他に座るけど」
見上げると、優輝さんが優しい微笑みを湛えていた。
「あっ……」
「どうしたらいい?」
ズルい!優輝さん、あたしに決定権を与えるなんてズルすぎる!
「どうぞ……」
あたしは、そっと椅子を出して促した。
「ありがとう」
優輝さんは、嬉しそうに微笑むと、そのまま黙って食べ始めた。
何か言わなくちゃ……何か話さなくちゃ……
焦れば焦るだけ挙動不審になる。
あたしは、パンを握ったまま動けなくなった。
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