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璃子……
俺は、意識を失うように眠りについた璃子を抱き上げた。
今日だけで、何度も味わった極限状態の緊張から解放されたんだ。
無理もない。
そのまま、寝室へ運ぶ。
間接照明の明かりの中、そっとベッドに下ろして顔を見ると、頬は涙で濡れていた。
上着を脱がせて、ブラウスのボタンを上から2つ外してやる。
一瞬、優輝のコロンの薫りが鼻についた。
二度も抱きしめられたんだ、薫りがしても当然か……
自分に言い聞かせる。
だが、首元から見える白い肌に吸い寄せられた。
思わず首筋に唇を這わせ、鎖骨の辺りに顔を埋める。
璃子の香水の柔らかなroseの薫りが鼻を擽る。
ブラジャーの紐が見える。
思わず3つ目のボタンに手をかけた。
「嫉妬に駆られ過ぎだな」
自分に失笑して思いとどまった。
璃子をそっと寝せて、布団をかけた。
「はぁーっ」
大きなため息が自然と出た。
璃子、お前の前では余裕なフリをしているが
この俺が、嫉妬で狂いそうだよ。
優輝と璃子が仲がいいことは知っていた。
だが、酔っぱらいから助けた時の優輝は、
……完全に男の顔だった!
あの瞬間、正直ヤバいと思った。
きっと、俺が璃子を抱きしめたのを見た時、同じように優輝は何かを感じたハズだ。
それなのに……俺は、璃子を優輝に任せた。
冴子に言われた言葉も酷く心に痛む。
だから、今回は俺のミス……璃子だけを責める訳にはいかない。
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