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俺は、階段から降りてくる所から璃子の存在に気づいていた。
湯上がりで、髪をアップにして小さな顔が、ますます小さく見える。
遠目に見ても、とてもきれいな浴衣姿。
璃子、そんな格好で降りてきたら、マズイだろ!なんて、みんな同じ浴衣姿なのに、心の中で、璃子にだけ注意してみる。
てっきり、すぐここに村上が連れてくるだろうって思っていたのに、ふたりは途中で立ち止まった。
やっぱり来づらいか……
俺は静かに人だかりから抜け出た。
「璃子」
声をかけると、黒目がちの大きな瞳を見開いて、驚いた顔をして俺を見上げる。
でも、その表情は明らかにうれしそうで。
あまりに素直な反応に……
今すぐにでも抱きしめそうになる。
堪らなく……かわいい。
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「よかった。松本部長が来てくださって」
村上姉さんが、ホッとしたように話しかけた。
「来づらかったんだろ?」
「そんなとこです」
ふたりが話しているのを聞きながら、あたしは、とてもうれしかった。
すぐに、坂本さんも「由香里!」なんて言いながらやって来て、優輝さんも冴子さんも、結局、人だかりがそのままズルズルと移動して、村上姉さんとあたしは、吸収された。
その直後、
「どうぞ、お待たせいたしました」
と、いうホテルの方の誘導で、開場した。
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