2277人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
翌朝。あたしは、和也さんの腕の中で静かに目覚めた。
失いかけた愛しい人の腕の中……
あたしは、和也さんの胸に擦り寄ると、ギュッとしがみついた。
あたしを包んでいる和也さんの腕に力が入り、ギュッとあたしを抱きしめる。
『夢じゃない』
あたしは、いつもの和也さんのコロンの薫りを吸い込んだ。
「大丈夫か?」
穏やかに語りかける声が聞こえる。
「……うん」
いつから眠ってしまったんだろうか?
確か玄関にいたはず……
和也さんの言葉を聞いて、ホッとして身体中の力が抜けた。その瞬間から記憶が無い。
「起きれるか?」
「……うん」
そっと腕が緩まり、和也さんの顔が覗く。
穏やかだけど、その瞳は心配の色をしていた。
きっと、一晩中あたしを包んでいてくれたはず……
和也さん、あなたはそんな人。
ポーカーフェイスを決めていつも余裕に振る舞っているけれど、実際は、誰よりも細やかに気を遣い、さりげない優しさで包んでくれている。
一緒に住むようになって、少しずつわかってきたよ。
本当にいつもありがとう。
,
最初のコメントを投稿しよう!