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週末は、いつも以上に和也さんがあたしとの時間を割いてくれていた。
初めは、ちょっと後ろめたくて距離を縮められなかったあたしを、半ば強引に傍に引き寄せていた。
まるで、『ここの2人の気持ちが、ブレてはいけないんだ』
とでも言っているかのように……
あたしも、そんな和也さんにそっと甘えて寄り添っていた。
日曜日の夜。
「璃子、明日、総務に行って、今度の週末の社員旅行。行きのバスキャンセルしておいで」
和也さんは、何かを決めたかのように突然言った。
「えっ?」
あっ、そうだった社員旅行だった。
11月の初っぱなに予定された社員旅行。
温泉に行くとか言ってたっけ?
っで、どうして行きのバスキャンセルなの?
不思議な顔で和也さんを見ると、ちょっと恥ずかしそうに話を続けた。
「俺が、商談が入ってるから……」
それはもちろん知ってる。だってあたし松本部長担当だもん。
「だから、俺が商談終えてから車で連れていくから、璃子はここで待ってろ。
総務には、商談に一緒に行くことにして、バスをキャンセルしておいで」
「それって?」
「ふたりで行こう」
キャッうれしい!あまりのうれしさに、胸が、キュンと鳴き声をあげた。
「ただ、帰りは、そのまま出張だから、送ってやれないんだ。だから、バスで帰ってもらわないといけないんだけど……それでもいいかな?」
「はいっ」あたしは、めちゃめちゃいいお返事をした。
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