銀狼

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「僕を忘れないでもらえるかな?」 俺はすっかり忘れていたが、この場には廉もいた。 天城の黄金ですら、軽々と砕いていく男狼が慌てて避けたところを見ると、男狼も気づいていなかったんだろう。 「……大野、廉………!」 「俊平や歩だけじゃない。僕だって、夏休み以降変わったんだ」 明確な敵意を見せる男狼。白河の使い魔として今まで廉を見てきたあいつは、廉に対して何か思うことがあるのだろう。 「てめぇは、いつかぶっ飛ばしたいと思ってた」 「………うん。なんとなく、わかってる」 「ご主人の手前、我慢してたが、この場では思う存分殴れる。気の毒にな、手加減できそうにねぇぞ」 次の瞬間、男狼は廉の背後に移る。そして拳を固め、殴りかかる。 「"鋭"」 だが廉の背部から鋭利なものが飛び出し、男狼を狙うが、男狼は構わず廉を殴り飛ばした。 「嘗めてんのか。その程度でビビるわけねぇだろ」 鋭利なものを殴りつけた為、男狼の拳からは血が垂れるが、痛がる様子はない。 「ご主人がどれだけ傷付いてきたと思ってやがる! ご主人を守るなんて夢語ってんじゃねぇ!」
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