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「"血まみれの演舞(ブラッディダンス)」
白河対奏達の戦いが終わり、廉と男狼の戦いへと目を移す。
廉は背中に数十の矢を浮かせ、両手に剣を持ち、突進。
回転を軸にし、幾つもの武器を召喚しながらの連続攻撃。俺の知る限り、廉の最大技。
実際俺もあの技には苦戦した。
「温いんだよ」
男狼はこの技に対し、避けることも防ぐこともしない。
真っ向勝負。
攻撃をいくらくらおうとも、廉を殴り続ける。その廉も、男狼のアホみたいな拳に対して、攻撃の手を緩めない。
お互いの意地がぶつかり合う。
「はいストップ」
その戦いに白河は水を差した。
男狼の影と廉の影がそれぞれ、二人を羽交い締めにし、動きを止める。
「何しやがる、ご主人。邪魔すんじゃねぇよ」
「止めないと、廉が死んじゃうでしょ?」
実際男狼の拳を受け続けた廉の体はボロボロだ。恐らく立っているのもやっとの状態だろう。
「ギンちゃん、ありがとう。わたしの為に頑張ってくれて。後は自分で伝える」
男狼は姿を消す。白河は廉へ向き、言葉を発する。
「わたしさ、そんなにいい子じゃないよ。わたし以外に優しくするのは見てて嫌だし、わたしを選んでくれなかったのもムカついた。クリスマスまでなんて待てないよ」
白河の言葉に廉は何も言わない。
「だからさ、わたしを守ってくれなくていい。わたしを選ばなくていい。わたしを、好きにならなくていい」
白河は廉の動きを止めている影を解除する。
「わたしと廉は仲の良い幼馴染。友達。それ以上でもそれ以下でもない」
崩れ落ちる廉。試合終了の声。沸き上がる歓声。
「だからもう、無理しないで」
白河はそう言葉を残し、去って行った。
その言葉が廉に届いたかはわからない。
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