3316人が本棚に入れています
本棚に追加
いつか行ってみたいと思ってた、屋敷の離れ。
屋敷内にあるそれは、いつもチラチラと目の端に映り、厳重な警備が施されているわけでもなくーーー
容易に行けそうに見えた。
大人達にはなぜか目に見えない結界があるのか、離れなど存在しないような様子で、それがまた不思議だった。
母には常々聞かされている。
『離れに近づかないこと』『離れの事を人に聞かない、言わないこと』、それを破れば母共々、屋敷を追い出される事を。
姉は大人しくその命に従い、大人達同然離れに関しては知らぬ存ぜぬを決めていた。
姉は気にはならないのだろうか。自分は男の子だから気になるのだろうか。
けれど誰に聞くことも出来ずに、ただ離れを見つめる事しか出来なかったある日ーーー
屋敷内には朝からたくさんの人が出入りし、なにかお祝いの会を開く準備に追われていた。
両親は早朝から不在で、屋敷は慌ただしく、小さな子供にかまってくれるものなど誰もいなかった。
姉もなぜか不在で、まるで神様がくれた好機のように感じた。
ーーーーー今しかないかも
そう決心したはいいが、高揚する気持ちとは裏腹に、禁忌を犯す罪人のような背徳感が彼を躊躇させていた。
ただ離れを見ていたその時、
離れの小さな飾窓に何かがよぎったように見えた。
ーーーーー!!
ーーーーーあれ?
刹那、彼は夢中で離れに走って行った。
最初のコメントを投稿しよう!