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「…きっとみんなも、そういう先生のこと好きだと思うよ。」
「…だといいけどな、」
「絶対そうだよ。」
三浦が笑ってそう言うと、本当にそうなんじゃないかと思えてしまうから不思議だ。
でも本当にそうだとしたら、…嬉しいな。
「…ありがとう。」
本当に、そんな言葉を貰う資格ないかもだけど、ありがとう。
「…あはっ!ちょっと涙目だし。」
「は、ふざけんな!なわけねぇだろ!」
…嘘。ちょっと三浦の言葉が嬉し過ぎてウルっときたのはある。
「はいはい。」
もうこの面談が終わると、受験生は本当に学校に来なくなる。
それぞれの入試が終わり次第、学校に来ることにはなるけど。
それまでは自分との戦いだ。
だから面談日は、そんな生徒を送り出す最後の大事な日なんだ。
「…三浦、後悔しないように頑張って来いよ。俺はここで待ってるから。体調にだけは気を付けて勉強しろよ?」
最後はちゃんと、三浦を一人の生徒として、担任の立場から送り出してやりたい。
「…はい。ありがとう先生。先生に良い報告出来るように頑張るね。」
「…おう。」
「…今日はありがとうございました。」
ーーーちゃんと担任としてお前のこと見送れたかな?
ガラガラっと戸が閉まる音で一気に肩の力が抜けた。
これで最後の一人も無事終了。
もうこのクラスに全員が集まるのは、卒業式前くらいで。
ポカーンと心にひとつ大きな穴が空いたみたいだった。
教室をぐるりと見回すと、目頭が熱くなってきて、しばらくの間、その場を離れることが出来なかった。
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