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とある場所で、二人の人間が争っていた。
「もう、後戻りは…………出来ないのか?」
神々しい剣を構えている少年が言う。
少年の服装は絵に描いたような勇者であった。
顔は町を歩けば誰もが振り向くイケメンである、イケメンである。
「クハハハハハハハ!もう戻れぬよ。“_____”!!それに……………我は“魔王”だからな。勇者であるお前とは一緒には居れぬよ」
もう一人の青年は全てが禍々しかった。
そして………哀しかった。
「そんなッ!…………………そんなことない!!僕たちは親友だろ!?勇者とか魔王とか関係ない!!」
勇者は叫ぶ。
もう一度、親友と居たいがために。
「フッ、親友…………か。……………悪いな、“_____”。我は、戦いたい《殺したい》」
魔王は哀しそうに、殺意に満ちた目で勇者を睨む。
「!!…………………………分かったよ。僕は、君を、救う《殺す》!!」
勇者は涙を流しながら、覚悟を決めた。
「あぁ、それでいい。どのみち我は魔王となったのだ。何れ、我は支配欲と破壊欲の塊の存在になるだろう。そうなれば、我は我で無くなる。我はそんな事にはなりたくない!ならば、その前にお前と戦いたい」
魔王は勇者を見て満足した。
今の魔王は、痛々しい程に哀しかった。
「行くよ!魔王!!」
勇者は駆け出す。変わってしまった親友を救う《殺す》ために。
「来い!勇者!!」
魔王は迎え撃つ。自分を救おうと《殺そうと》する親友と戦いたい為に。
両者はぶつかり合う。
―――あぁ、懐かしい夢だ。
これは夢。たった一握りの存在を除けば、知っているモノなどいない昔の出来事。
夢は勇者の剣と、魔王の魔術がぶつかり合っていた。
夢は所々ノイズが入り、分からない所もあった。
そして夢はとうとう、最後に差し掛かっていた。
両者は満身創痍。
魔王は地面に仰向けで倒れ、勇者も両膝を地面につき、剣を地面に突き刺し体を支えていた。
「はぁっ、はぁっ、っん!?………………はぁ~。僕の、勝ちだね」
勇者と魔王の闘争は、勇者の勝利だった。
「あぁ、お前の勝ちだ。そして我の敗けで、我は死ぬ」
魔王は清々しい笑顔で、自らの敗けを、死を認めた。
「恐くは……無いの?」
勇者は疑問を言う。自分は死ぬというのに、恐怖は無いのか、と。
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