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「恐くは無いな。何故ならば、我とお前の、“魔王”と“勇者”の“物語”は終わらない!それに、我は死ぬが、“魔王”の“力”と“記憶”は引き継がれる!!」
魔王は立ち上がり、両手を拡げて高らかに宣言した。
「我は魔王!幾千幾万の年月が流れようとも、我は再び世界に君臨する!!」
それを言い終わる時、魔王の体が崩れていく。
「!!魔王、か、体が!?」
「狼狽えるな!我が死ぬだけだ」
沈黙が場を支配する。
「僕はね、魔王。僕は……君の事を、本当の親友だと思ってる」
沈黙を破った勇者の言葉に、魔王は少し唖然となる。
「プッ、クククク、クハハハハハハハ!」
唖然としていた魔王が笑いだした。
「な!?、なぜ笑う!」
「クククク、別に、ただ単純に考える事は一緒だなと思ってな」
魔王の言葉に、今度は勇者が唖然となる。
「何だ?可笑しな顔をして。そんなにも前の言葉が信じられないか?」
「ちっ、違うんだ!え~とね?魔王も僕の事を友達だと思ってくれてた事に嬉しくなって」
「…………そうか……」
またも沈黙が流れる。
魔王の体は既に半分以上が崩壊していた。
「もう、最後だな」
「そう……だね」
「またな、勇者」
「!!…………うん。またね、唯一無二の魔王」
「唯一無二、か。クククク、悪くない」
その言葉を最後に、魔王は完全に崩れ去った。
その場に残ったのは、静かに涙を流す勇者と、風に乗って飛んでゆく、黒い砂のみであった。
夢が終わった。随分と懐かしい夢だったな。
今の魔王ではなく。遥か昔の魔王。
自分であって自分ではない。
何だろう?胸が痛い。剣に貫かれた時よりも、ずっと痛い。
何で?誰か、誰か教えて…………
「勇者が!」
「一人だけ逃げようと!」
「してんじゃ」
「「「NEeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!」」」
ヅガアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンン!!!!
…………………あぁ、夢から覚めない方が良かったと思う時、あるよね?
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