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そこでふと有住が難しい顔をしているのに気づく
ウサギも気づいたのかこ首を傾げている
「有住、如何した。何か思う処在るなら言わぬか。」
声をかけられしばらく思案した有住はおずおずと口を開いた
「なぜに猫へ執着するのです?確かに猫は珍妙な物言いを姉上に致した様ですが、そもこの世界へはアルバート殿に巻き込まれ来られた。なら今此処で、アルバート殿にお帰し願えば宜しいのでは?」
有住の言葉にウサギを仰ぎ見ればバチリと目が合う
「わりぃがそいつは無理な話だ。」
「なぜ」
「帰すのは俺の役割じゃないからさ。」
「役割?」
うむ、私が話すより原住民が話した方が方が善かろうの。
「俺の役割はお前達を見つけて此方へ連れてくる事。自力で彼方へ行く力は持っていない。だから帰すことは出来ない。」
「役割とはなんなのです?」
「そのままさ。この世界のものは全て役割がある。俺はさっき言った通り。食い物は別の世界の奴等を大きくさせ、飲み物は小さくさせる。キノコは両方。お前の望む世界へ渡るには、女王様のお力が必要だ。」
ウサギが一通り話し終わると、此方に眼を向ける
「女王様は、お寂しい方なのだ。全てを持ち、何も持っていない。だからこそこの世界の女王なんだ。」
慈しむように優しく笑って見せるウサギは心から女王を慕っているように見える
お主そのような顔も出来るのだな
「わかりました。一つだけ宜しいですか?」
「なんだ?」
「女王は俺の知る人物ですね?」
「!!…こいつは驚いた。そうだな、知っていて、知らない。それが答えだ。」
「それは重畳。何とはなく解って来ました。ありがとうございます。」
有住は頭がよう冴える、そう言うのであれば女王は人間か…些か楽しみが減ったがまぁいい。代わりにこれからの動きは有住に決めさせるのも良いかもしれぬ。折り鶴も言っておったしの。
「さて、話は済んだ。夫人は有住に押しt…任せれば、万事丸く収まるのぉ」
「姉上ェ…あ、アルバート殿、よろしければこれを」
立ち上がり尻を払えば有住から避難がましい目で見られるが華麗に無視じゃ。
「雛菊の襟留です。大した物ではないですが、受け取ってくだされ。」
ほんにマメな奴よな。ウサギは襟留めを受け取り嬉しそうにそれをなぜると、有住と握手をして別れた。
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