姉上=ゆうこ=有子=アリス

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色彩の暴力に呆然と立ち尽くしている己の耳が聞き覚えのない男の声を拾う。目の端に居た姉上はいつのまにかこれまた大きな折り鶴の前に立っていた。急に背筋がそそけ立ち足早に近寄れば姉上は思案顔で折り鶴を見上げている。 「来るのは把握していると言っていたが、迎えに来んのかあいつは。」 「なんの話ですか姉上。そもそもここは何処なんです?」 「うん?ふむ、そうだな。思いの外お前は冷静だし少し話をしよう。」 此方を見やり頷くと足元の大小なる折り鶴を蹴散らしながら姉上はその場に腰を下ろした。己も彩飾な紙風船を蹴散らしその場に座すれば風呂敷はひったくられ向かい合う己等の前に広げられた。幸い中は崩れておらず美味そうな惣菜や握り飯が所せましと並んでいる。添えられていた箸を使いそれらを腹に納めながら、姉上の話を聞いた。 曰く 神木の元にて着物を着、急ぎ足で走る身の丈四勺(121.2㎝)程の白兎が何かを探していた。声をかけるとその者は驚き飛び上がり、着地の瞬間大きな穴を作り出しそばに居た姉上をも巻き込みながら共に穴の中へ落ちていった。たどり着いたこの部屋にすでにウサギの姿はなく、しかしこれ程愉快なことは匆々起こるまいと喜面一色出口を探すことにした。行く先々は草木に至るまで面妖な姿形をしており実に面白いものだったと。 「その時会った猫が言うたのだ。<オメェ等はここに来る定めなんだ>とな。<だが一人足りねぇ。見学はここまでにして、いっぺん帰りなぁ>だそうだ。」 そこまで言うと姉上はどこから出したのかぐいと湯呑みを煽り喉を潤し続ける 「偶然の連続で引きずり込まれたと思ってみれば、あれらは必然だとぬかしおる。実に痛快だとおもわぬか?有住。」 力強く湯呑みを床に置き男臭く笑う姉上はまこと父上に瓜二つで、己の分まで男前成分持っていったんですねわかります。 「それで双子の己だろうと?」 「まさか父様や母様ではなかろうよ。」 頼もし過ぎる姉上の言葉に、まぁ今までもどうにかなっているのだし今回もどうとでもなるだろうと思っている辺り己はかなり毒されている。
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