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さて、諸君いかが御過ごしだろうか。有子だ。弟有住に折り亀と紙手鞠、瓢箪を渡し残りの荷物を確認する。腰の巾着には金柑の甘露煮と前回来た時に使った手帳にペン。後は何かあってもまぁどうにかなるであろう。私は細かい事を考えるのが好きでは無い。念の為言うが脳筋ではないからな?間違うでないぞ。
「なにをもたついておる。早うせぬか戯け。」
さくさく門を潜り抜け振り返れば有住は今だ門の内側。また可笑しな事を考えておるな。有住は私と双子だが説明せねば気付かれぬくらい似ていない。性格も中身も笑える程真逆だ。だが私の理解できぬ者ばかりのこの世界で真逆の有住には理解できる者ばかりとなれば、頼もしい事この上無い。そう思わぬか?
「申し訳も。姉上、これから何処へ?」
漸く決心着いたのか此方へ走りより歩調を合わせ。うむ、そう言った気遣いも私には無理だ。
「ウサギの家に行く」
「初めに申していた白兎ですか?」
「ああ」
「しかしながら、兎など見分けがつかぬのでは?」
訝しげ...と言っても無表情にしか見えぬが、此方を窺いみてくる有住。お主もう少し表情筋を鍛えぬとその内あらぬ誤解を生むぞ。
「顔をみれば、いや、眼をみれば解る。」
「そ、ソウデスカ。」
「其奴眼の色が桜色をしておるのだ。その様な者いくらキテレツな世でも匆々おらぬだろう。」
「あ、成る程。それは確かに。」
ひきつり笑いから一変納得した様子で頷いておるが、フィーリングで探すと思っておったのか?(いいえ野生の勘です)産まれた頃から同じ時を過ごしておるのだ、無表情でも私には百面相並みに違いがわかっておるぞ。胡散臭い眼でみおってからに。まあよい。確かそろそろウサギの家だがはて、あれの名前はなんと言ったか。日ノ本経由なのだから和名にすればいいものを。なかなか思い出せぬままそれでも歩みが止まるわけでもなく、目視で解る距離にウサギの家が。
「ファッ?!」
「ゲッ!!!!」
有住は時々よくわからぬことを口走るが、なんだファって。恐らく目に映る風穴の空いたウサギの家に驚いての事だろうそれはよい。良くないのはその後じゃ。
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