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「先生の白衣姿も今日で見納めですね…」
月末…今日で水原先生はこの病院を退職する。
挨拶に来ただけなのに、先生はいつも通り白衣を着て、中庭のベンチに座っていた。
「ちょっと…何でそんな顔してる訳?あなたとは今日でお別れじゃないでしょ」
「そうですけど…」
先生の傍らに立ち、そうボソッと呟くように私が答えると、
「まぁ、こうやって中庭で話す事はなくなるか…」
と、空を見上げて先生も呟く。
そして次に、私の視線を捉えて言う。
「仕事人間さん、あんまり仕事し過ぎないでね」
「もちろん」
「へぇ…なんか意外」
「仕事も大事。水原先生も大事。でしたよね?」
私が笑顔でそう言うと、先生は少しだけ驚いて、少しだけ耳の先を赤くする。
「誰?そんな恥ずかしいこと言ったの」
…水原先生でしょ?
そんな言葉を心の中に残して、
ずっと触れられなかった白衣を引き、私は先生にキスをした。
Fin*
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