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(しかし何であんな服装なんだ?)
ダンプの運転手は、その職業に似つかわしくない服装をしていた。具体的に言えば、まずネクタイを締めていた。そしてパリっとしたカッターシャツ――新人サラリーマンか、若手弁護士?……いや、ひょっとしたら……
ガッコウノセンセイノヨウナフクソウダナ
まぁ、どうでもいいことだ。どうせ私は死ぬのだ。死ぬ前に、私をはねた人物が、一体どういった人物であったのか知ったところで、何の意味もない。
いや……待て!
本当にそうだろうか?
…………
違う気がする。
……きっと違う。
(私は……私は……)
そうだ私は……
「私を轢き殺した人物……それを確認するためにこうしているのだ!」
そうだったのだ!
私はソノために、こうして……
何度も何度も、自分の死に際の再現VTRを見せられているのだった。
フロントガラスの向こう、ハンドルを握る手、銀色の光る物体、ネクタイの上……顔……顔が更に歪む。
「アナタハダレ?」
私はキッと運転手を睨みつける。
その顔……
(どこかで見たような気がする……)
ダレなの……
謎の人物……顔が霞んでいく……
ダメだ……今回もダメだ……
そろそろ時間が来る。
私と猫が出会う時間。
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