私の眼の中の悪魔

3/8
前へ
/14ページ
次へ
(しかし何であんな服装なんだ?)  ダンプの運転手は、その職業に似つかわしくない服装をしていた。具体的に言えば、まずネクタイを締めていた。そしてパリっとしたカッターシャツ――新人サラリーマンか、若手弁護士?……いや、ひょっとしたら……  ガッコウノセンセイノヨウナフクソウダナ    まぁ、どうでもいいことだ。どうせ私は死ぬのだ。死ぬ前に、私をはねた人物が、一体どういった人物であったのか知ったところで、何の意味もない。  いや……待て!  本当にそうだろうか?  …………  違う気がする。  ……きっと違う。 (私は……私は……)  そうだ私は…… 「私を轢き殺した人物……それを確認するためにこうしているのだ!」  そうだったのだ!  私はソノために、こうして……  何度も何度も、自分の死に際の再現VTRを見せられているのだった。  フロントガラスの向こう、ハンドルを握る手、銀色の光る物体、ネクタイの上……顔……顔が更に歪む。 「アナタハダレ?」  私はキッと運転手を睨みつける。  その顔…… (どこかで見たような気がする……)  ダレなの……  謎の人物……顔が霞んでいく……  ダメだ……今回もダメだ……  そろそろ時間が来る。  私と猫が出会う時間。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加