WELCOME TO LIAR STORY!

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 この空間端末の機能は人と人のコミュニケーションを離れていても成立させるものが様々含まれていたり、“アプリケーション”という暮らしを充実させるゲームや情報、音楽を流したり、現在の位置情報を空間の液晶に示したりとこれにより人々の暮らしは急成長を始めた。今では科学の力で複数のネットワークを構築し、不特定多数の人間と情報を共有するなどという“インターネット”という機能もつき始めたが如何せんこちらはまだ浸透率が低い。  そして今回サギリから届いたメールも、昼休み前に来て欲しいという念の入ったコミュニケーションだったがしかし――それにしてもサギリがそこまでして呼び出す理由がただの告白の準備にしてはおかしいと、この頃からシイタは微妙に考えるのであった。  無駄だったが。      ◆    ◆  結論から先に言えば、シイタは昼休み前に授業を抜け出す事ができなかった。この日に限って、だ。  彼が授業を抜け出すのは当たり前で、彼にとって授業を抜け出す事は特技な筈でそれが出来なかったらミサネのたらしこみ以外に長所なんてどこにも存在しないんじゃねーのとクラスメイトから揶揄される羽目になったシイタ。結局寧ろ授業後に職員室に呼び出されこれまでの素行を酷く注意され、しかしそんな罵詈雑言がシイタの頭の中に入る筈も無く、結局昼休みの半分がきつい灸を据えられただけで終わってしまった。  しかし何もこんな日に限って、抜け出す理由が自分の中ではなく他人の中にある日に限って狙い済ましたかのように先生は張り切ってしまっていた。当然シイタが反省する事などどこにもなく、寧ろ親友であり先輩であるサギリとの約束を良くも破らせたな、と頑固な油汚れを見る目で先生を見ていたらそれは反感を喰らった。いつも先生の説教を回避してばかりのシイタは、説教の防御面が疎かになっていた訳だ。  古典的に無理矢理物理的に逃げようとしてしまったのがいけない。両手両足に魔力の枷をつけられてもうどうしようもない状態だった。物理的に逃げるか、魔法を使って逃げるか、どちらにせよ向こうはその手のプロなのでどっちにしろどうしようもない状態に陥っていた訳だが。サギリやミサネと違い、シイタはその点天才ではない。凡人の類にならばぎりぎり入れるくらいのレベルだ。
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