WELCOME TO LIAR STORY!

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 ようやく晴れて自由の身になった清水シイタの今すべき事は急いで部室に向かう事だ。しかし正直もう告白は終わっている事だろう。まだじらしている可能性も無くは無いが、終わっている可能性の方が普通に高いだろう。あのサギリがしどろもどろになる所を想像できない。  そうなるとやはり自分は寧ろいらなかったんじゃないかとさえ思えてしまう。何故自分を昼休み前に呼び出したのか、今となってはそれを尋ねるのもどこか心細かったがしかし、ここまで予め成功を約束された告白を前に呼び出されるなんて“昼休み前に呼び出さなければならない大事な事”があったからに違いないと言えば違いないのだけれど。  そもそもこの時点でシイタは“セイナを呼び出した理由”というものを考えるべきだった。あまりにその理由が見え透いているようだが、そっちが間違っているかもしれないという事に思考を向けるべきだった。広い劉生魔法学園高等学校の廊下。考えるチャンスはそれなりにあった筈だ。否、サギリと分かれた直後から今まで、余裕であった筈だ。  それこそ魔法のように、閃くべきだったのだ。それに気付く前兆ならばあった筈だ。昼休み前に呼び出すという常識から外れた行為もそうだが、サギリがセイナに見せていた不穏な表情だって何かを思うことが出来た筈だ。  結局の所彼は日常的な思考のままで、魔法学園に生きる一人の生徒としての青春の真っ只中、彼は何も知らずなんでも部の部室を覗く。もう告白イベントは終わっただろうか、そうして覗いてみると。  結論から言えば床に倒れて死んでいる木村セイナと、その上で死体の服を漁っている天野サギリの姿があった。
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