WELCOME TO LIAR STORY!

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「この世界は数千年前からある科学によって作られた架空空間で、今の俺達は“本物の身体”から採取されたデータであるという事になる」 「……俺の、この身体が……データ?」 「お前だけじゃない。この世界に生きとし生ける全ての人間、そして全ての物体がたんなる1と0の集合体なんだよ」  わなわなとシイタは自分の掌を見つめる。この掌も、自分の存在も、天野サギリも、そこで横たわって動かない木村セイナも、今昼飯を食べている田辺ミサネも――データ。  1と0の集合体。  液晶の上の文字。  紙の上のインク。  机上の空論。  否、机上の正論と言うべきか。  いずれにせよ、既にシイタの心は麻痺しつつあり――。 「証拠はある」 「……!?」 「俺はその可能性に気付いた時、政府の中枢データバンクをハッキングし、そしてこの世界の構造が書かれた図を入手した。即ちこの世界の物が何で出来ているのかをも」  サギリが“証拠がある”と言った以上、その事象は正しい。そしていつも新しい学説を打ち立てていく――そういう事実が残っている。データとして。データの自分の中に。  自分は今、データだったのだ。 「だが間違えるな。シイタ。確かにそこにいるお前はデータだが、お前と言う存在はデータじゃないよ。元の世界でちゃんと眠っている」 「どういう……事だ」 「元の世界ではどうやら超巨大コロニーの中で膨大なサーバーの傍らで何億人と言う人間がコールドスリープ状態にあるらしい。この世界の半分くらいの人間は向こうに体がある……俺とお前は調べておいた。俺とお前はちゃんと向こうに身体があるよ」  本当か? と一瞬言いたくなったがまだ複雑だ。喜ぶどころかまだ悲しむ事すら難しい。単純にショックが強すぎて感情がコールドスリープを起こしかけている。 「ただ、残り半分の人間はこの架空世界を維持していく上で、元の世界からデータ化してきた人間一人一人に合わせて“人間関係”が満たされるように配置された完全なデータだがな。例えば、田辺ミサネとか」 「ミサネが……」  小さい頃からいつも隣にいた。  小さい頃からいつもうるさかった。  小さい頃からいつも世話焼きだった。  小さい頃から永遠にいつも横にいるような錯覚にさせてくれた。  あの少女が――つまりは偽物。  もう、訳が分からない。 「うそだ……そんなの……あいつは……」
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