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小動物の様な顔でそんな反応をされるとこちらも来るものがある。ただの会話だけで準備が要るような、ヘタレ特有のチキン加減。
「私の首が折れていた時……ずっと横にいて、心肺蘇生してくれたんですよね……」
「……」
そんな記憶も……あった。五里夢中だったが胸の感触とか唇の潤いとかやたらと覚えている。当時はそれどころじゃなくただ只管に回復呪文と振動呪文を手に込めながら只管に、死んで欲しく無いと必死に必死に必死に――。
もしや、胸を触られたとかキスされたとか言われそうな気がして。
「もしかして……ファーストキスだった……?」
「そういう事言わないでくださいよ……」
更に俯かれた。ミサネの視線が凄く痛い。こういう時のミサネは本当に怖い。
「……ありがとうございました……その、シイタ先輩……私なんかの為に」
「別に……可愛い後輩がそんな目にあってるのに、何もしないわけにはいかないからさ――それよりセイナちゃんこそ大丈夫なのかよ、変な奴に服脱がされて」
「ちょっとシャツを脱がされてたくらいですから……そんな事、気にしてられません」
「怖かったら言うんだ」
ミサネがセイナの手を取る様に先輩らしさをシイタは垣間見た。改めてこんな才能があるんだな、と思った。
「……はい。それで、シイタ先輩……今度お礼とは言いませんがその……退院して、パレードも落ち着いたら一度料理を作らせていただけませんか……?」
「え……まじで!? うん、待ってる、めっちゃ待ってる」
飛び跳ねたいくらいだった。何と言うか本当に真心篭めて作ってくれそうで嬉しかったからだ。改めて率先して助けてよかったな、と思ってる。
瞬間、いつの間にか後ろに回っていたミサネに首元を掴まれていた。
「今からお前の首、砕く」
「……ど、どないしました?」
押し寄せる殺気に思わず関西弁になった。本当にミサネは怒らせると怖い上に、その沸点が付き合いの長いシイタにすら分からない。
「なんだ嬉しそうに料理を食べられるじゃないか。いつも私のは食わないくせに」
「……お前のは家計を圧迫するんだ」
「とりあえず面会時間は終わりだ。帰る、シイタ」
「いやあの」
ずるずると引き摺られていくシイタ。靴底が磨り減っていくのが良く分かる。苦笑いをするセイナに目を向けるも助けてくれそうに無く、そもそも助ける事が今の彼女には無理なのだろう。
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