WELCOME TO LIAR STORY!

3/26
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「だから! なんでお前は寝惚けた俺如きに屈してアラームを止めちまうんだよ! ベストを尽くせ! 俺が本当に起きるまで頑張れよ! また留年に一歩近づいちまったじゃないか! 誰がお前を作ってやったと思ってるんだ糞野郎! 次こんな事したら絶対魔法解除してスクラップにするからな!」  清水シイタが通う劉生魔法学園高等学校まで、住処としている一人暮らしのマンションから大体五分。しかし今彼が起きたのは一限が始まってから大体五分。  最早約束された遅刻の罪を少しでも和らげるために自ら手製の魔法目覚まし時計に、子供の如く八つ当たりのスペルを唱えながら着替えと食事を同時に行っている。起きて三分で支度を終えられるほどに彼の朝の準備スキルは酷く洗練されていた。  寝癖がかなり立っているがもうそんな事は知らない。向こうで直せば言いだけの話だ。  靴を履きながらシイタが空間をなぞると、浮き出た光で構成された液晶が呼応して出現する。“空間端末”の出現だ。物理的に触れる事が出来ないその液晶には確かに何百通もメッセージを受信しているという信号がチカチカと表示されていた。 「ミサネ……っ、あああっ、ったく、遅刻して欲しくないならモニコの一つでも掛けろや役立たずが」  既に予想がついているメッセージごと、すり抜ける液晶を消し去るとシイタは靴を履き終えスケボーを取り出しながら外に出るのだった。  地球。  いつからかあるのか分からないこの星では、“魔術”と“科学”のおかげで人々が皆安心して暮らせる幸福な現実に満ち溢れている。若干の差はあれど、誰一人として例外も無く幸せで、生まれてから死ぬまで絶対安心の生活を保証されている。  そしてここは日本エリア最大の学園都市を持つ劉生魔法学園。主に魔法の研究に重点を置いた研究所付属の学園で敷地面積は東京ブロックの三分の一に匹敵し、その財政力は日本エリアの十分の一を占めている。世界への政治力も日に日に強めており、今最も最強の学園施設と言われ、二つ名は“花鳥風月”。そこでは毎日新しく美しい魔法が生産されている。  夢の学園。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!