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そんな夢の学園に入る前から大事にしていたスケボーを空に投げるとシイタがそれに飛び乗る。何もしなければただ落下するスケボーだがシイタが乗ったことで魔術アイテムとしての力が発動し、重力から解き放たれ鳥の様に空を舞いながら一直線に劉生魔法学園高等学校を目指していた。
そこへ。
「ようシイタ。今日の言い訳はどうするんだ? 昨日食ったシイタケが実はタノシイタケで笑いが止まらず通学が遅れてしまいました、シイタだけにってか?」
飛翔するシイタの隣に同じく重力加速度を無視した移動法をする一つ上の白髪の少年の姿があった。移動法としてはシイタみたいにスケボーに頼らず自分の身のみで腕組をしながら羽ばたく事もせず飛んでいる。余裕を見せ付けるように飛んでいる。
「あんただって遅刻じゃねえか。サギリさん」
「俺はもう登校しなくても許されるんだ――特待生だからな」
「朝からアンタの自慢話を聞くとか幸先悪いよなぁ……はいはい天才さんは何をしても許されますよどーせ僕は凡人のボンボンジーですよ」
「なんだその軽くありそうな動物の名前」
天才――天野サギリは紛う事なき天才だった。若干八歳にして世界戦闘部門魔術選手権、世界アート魔術コンクールを総ナメにし、十歳で新しい魔術分野の開発に成功し魔術者としては最高位の名誉であるシュバルツ賞を受賞――彼の話題が学校で語られない日は無い。
天才どころか、世界で最も最強である魔術師なのだから。
同時にサギリの幼馴染であるのだけれど。
「それにしたって珍しいな、サギリさん。いつもは授業時間中は来る筈が無いのに、何だ、流石に天才さんもクラスの雰囲気が恋しくなったか?」
「はは、そういう学校の雰囲気は君たちとの部活で充分だよ。魔法科学文学部の子達と戯れてるだけで幸せだよ」
「どうせそのせいで誰も俺に振り向きゃしませんよーだ……」
「おいおい、お前にはミサネという素晴しい家内がいるじゃあないか。何でお前達は一緒に暮らさないんだ? さっさと付き合ってやりたい放題やればいいじゃないか」
「……」
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