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冗談が通じる空気でもない。セイナを見た時から時折垣間見せていた何か敵と対峙している様な顔つきがこれ以上の冗談を阻んでいる。
『さ、サギリ様!?』
『ウソ、いやホント、サギリさんだ!』
『サギリ先輩ぃぃ!』
遠くから男女問わず生徒が駆けつけてくる。セイナと同じクラスで、外で授業をしている組の生徒達だろう。サギリの有名度は今や世界でトップレベルに達している。
面倒事になる前に俺はずらかろう、とシイタが校門に向かうと後ろからサギリに呼び止められる。
「シイタ――やはりここで話すか」
「何だよ、告白の台詞か?」
「違う。お前はこの世界の事を――」
そこまで言いかけておいて、しかし再びサギリは迫ってくる野次馬に目を向けると首を横に振ってそれを断念する。
「――なんでもない、じゃ、昼休み前にな。待ってるぜ」
決してそんな意味深な言葉を掛けてくるサギリに何も思わないわけでもなかったが、人間の群れに囲まれた彼を見て尋ねるのも面倒になり、とりあえずその場を過ぎ去った。
◆ ◆
「なんでメールを無視した」
「いや、メールじゃなくて通話をしてくれよ。あれなら切らない限りは永久的に魔法音楽が流れるだろうに」
「メールの魔法音楽で起きない奴はお前くらいだ」
「それは如何なる状況でも眠れると言う俺の長所を褒めてくれているのかい?」
「雪の中で寝て冬眠しろ」
「最近はマジでそういう魔法を考えていたりする」
「花の中で寝て永眠しろ」
「そういうハッピーエンドを俺は迎えたいね。周りに泣いてくれる人がいればなおいいかな」
田辺ミサネについて。基本的に言葉に抑揚が無い。基本的に客観的視点に回ることはまず無い。基本的に魔法メールを何件も他人の脳内に送るほど距離感が無い。肩まで伸びた黒髪を物心ついた時からずっと維持し続けている。クラスでの位置は美少女。シイタ的にはどこが少女だか分からない。結構胸と尻がでかい。だけどあれに弾力は皆無。恥じらいが無い。裸で風呂から出てくる。そして冷蔵庫の中身を勝手に食う。故にシイタも部屋に入れたがらない。妙な所で世話を焼く。そして幼馴染。
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