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「さあね。セイナちゃんへの告白内容だろ? あの人そっちの経験皆無じゃん?」
「でもそれでヘタレンシイタに相談するのか」
「ヘタレンシイタって」
物凄く弱弱しいキノコの名前みたいだ。
しかしそれでシイタに相談するのも確かに矛盾があるといえばあるが、特に気にはならない。シイタもまたそっちの経験が皆無なのだから。
「でもセイナちゃんならどんな告白でも聞き入れるだろ。あーあ、こう考えると行くの面倒だな。まるでリア充の自慢話でも聞きにいくみたいでさ」
「頼まれたんだろ。でも確かに、セイナはサギリの事好きだから」
あっさりと言ってのけた。女子にしか出来ない相談もあるだろうがそれは異性に話していいものかどうかシイタは首を傾げるものがある。こういう所もミサネの価値を下げる所があるのだが、しかし何故かなんでも部でも人気があったりする。
しかしそうなるとますます、サギリが告白すれば成功する率が跳ね上がる。実質ほぼ、といっても過言ではなかった。
「サギリはシイタを頼りにしている事もあるし、ここは一つ幸せを増やすと思って広い心を見せるんだ。天才に頼りにされるなんて、本当なら他の人間からすれば代わって欲しいくらいの立ち居地なんだから」
「何で俺にそこまで価値が見出せるのかは不明だけどね」
そういえばサギリとは付き合いは長いが、その天才性から頼られる事はあってもこっちから頼らせることは無かった筈だ。記憶はそう言っている。
直後、シイタの身体そのものから着信音――魔法音楽とも呼ぶべき音が流れていた。彼の体をスピーカーにして溢れるその音はしかしシイタにしか聞こえない。
その正体は“空間端末”と呼ばれる、人の脳内に魔法で直接流し込んだ魔法プログラム。科学と魔法が融合した最新鋭のアイテムで、劉生魔法学園の人間はこの空間端末の魔法プログラムを組み込む事を義務付けられている。特に脳を改造するわけでもなければ、脳に何か埋め込むわけでもなく、ただ数億もの命令術式が組み込まれた大きな魔法を人間の頭に送っただけなので外面的に変化は無い。
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